-------- --:-- | カテゴリ:スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2007-12-22 12:48 | カテゴリ:ひとりごと
先日、福智町にある「ビストロみながわ」に家族でランチに行きました。
その折、北九州のフリーペーパー「リセット」を発見、ちゃっかりもらいました。
予想以上に読みごたえがある記事が満載で本当に無料でいいの?って思いました。
その中でも特に気になった天野周一氏のコラム「10秒のキス」を
皆さんにもぜひ読んでもらいたいのでご紹介させてください。


「10秒のキス」

例年より桜の開花が遅れていた。総合病院のエントランス脇にある数本の桜も5分咲きで、春の訪れを待ちわびている。
 6時にロビーで待ち合わせていたが、高1になる長男から携帯に「少し遅れる」とメールが入った。高3の長女と中学2年の次男と一緒に一足先に妻の待つ病室に入ることにした。
 乳ガンが全身に転移し、余命幾ばくもないと、みんなが知っている。モルヒネの効果だろうか、いつになく穏やかな顔だった。
 先生が回診に来て、「どうですか、痛みはないですか」短い言葉に、妻は小さくうなずいた。
 親の反対を押し切って結ばれた私たちは、社内恋愛だった。三人の子供にも恵まれ、それなりに幸せな毎日を送っていた。
 今はもう、ベットに横たわる妻を見つめることしか、なす術がない。やがて先生は病室を去り、二人の看護師さんがテキパキと点滴を換えている。
 長男が慌てて、病室に駆け込んできた。「ごめん、部活がおしちゃって」よほど慌てて来たのだろう。学ランの下からワイシャツがのぞいていた。
 家族が全員揃ったのは久しぶりだ。子供たちの近況を聞いていた妻が、少しの微笑みと共に、私の方に目をやると、唐突に
 「あなた、キスして」と言った。
 二人の看護師さんと三人の子供たちには聞こえたのだろうか。一瞬ハッとしたが、ためらいもなく唇を重ねた。
 生涯の中で、こんなに長いキスは初めてのような気がした。
 薄目を開けて見れば、ひとすじの涙が頬を伝っている。そっと唇を離すと、嬉しそうに、だが、「短いのね」とスネてみせた。
 看護師さんも子供達も見て見ぬふりをしていたような気がしたが、私は、「ふたりっきりの時にリクエストしてくれよ」と頭を掻いた。
 精一杯の照れ隠しだったが、病室は静けさに覆われている。
 やがて深い眠りが訪れたのを確かめて、病室を後にした。涙で、病院の長い廊下がユラユラと揺れていた。
 それから丁度二週間後、妻は静かに息を引き取った。満開の桜の下で遺影を抱いた長女が、「あの時の母さん、とっても幸せそうだったね」とポツリ。
 子供の前で交わしたキスからもう3年が経った。3人の子供達の心に深く刻み込まれたのだろう、短大を出た長女は、大学生と高校生になった弟達の面倒をよく見てくれている。
 2人の息子達も明るく、真っ直ぐに育っている。
 君の、最後のメッセージは、決していい夫ではなかった私の心にも、永遠に灯っている。
 そして二度と交わすことが出来ない、君との「10秒のキス」を一生忘れないだろう。

 このショートストーリーは全て実話。3年前に最愛の妻を亡くした全亭協の会員のN氏が天野にだけ語ってくれた「10秒のキス」物語。全亭協の会員へ夫婦愛の最高の形として密かに語り継がれている。もうすぐ満開の桜が咲く季節になる。この話を公にしたことを、N氏の奥様はきっと天国で微笑んでいるに違いない。 彼は私に全亭協の愛の三原則、「ありがとう」「ごめんなさい」「愛してる」を妻が元気なうちに、もっともっと言えば良かったと、はにかんだ。
スポンサーサイト
秘密

トラックバックURL
→http://yukarikomh.blog23.fc2.com/tb.php/26-a24c6d91
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。